織田信長ブログ【人の言葉をさえぎるのはずるい】

  • 2006.05.25 Thursday
  • 15:33
鳴いても鳴かなくても殺してくれるわ!!

クハハハハ。信長である!この世は力が全て!!その力によって天下統一ももう既に我が眼前にぶらさがっておるわ!!

しかし最近良くない噂を耳にしてな。我が「文章力」に欠けていると申す奴がいるらしいぞ。このうつけがっ!第六天魔王とまで呼ばれ恐れられた我が文章力、見せてくれるわっ!!!



***



信長みたいにおっとりとしたヤツを見てると世話を焼きたくなっちゃうのはあたしの悪い癖なんだろうか。信長は小学校から高校まで一緒の幼馴染で、家も隣。小さいころはあたしの後ろをずっとついてくるようなヤツだった。

高校に入ってからは背が伸びて、サッカー部でずっとレギュラーでやってる上に、顔もそこそこなもんだから、信長はモテた。でも、群がる女の子たちは信長のダメな部分は見えてなかった。弁当を忘れたりするのはしょっちゅうで、朝一緒に登校するときに一度寝巻きのまま出てきた時もあった。

「おはよう。お濃。」
「・・・あんた、なんで寝巻きなの?」
「え?あ、ホントだ。なんで?」
「あたしに聞かれても知らないわよ!早く制服に着替えてきなさい!」

こいつはあたしが居なかったら寝巻きのまま登校してたのかと思うと本当に落ち込む。こんなヤツが幼馴染だなんて。今はモテてるけど、そのうち馬脚を表して「馬鹿」の烙印を押されると思うと、なんだかかわいそうだ。


しかし、あたしの予想は見事に外れた。信長がぼーっとして英語の授業中に国語の教科書を読んだ時。「あ、これはモテ期の終焉だな」と思った直後、隣の席の由香里が「信長君、かわいいー。」

まさか。

周りを見るとほとんどの女子の目がハートになってた。しまった。顔の良い男のボケはそこまで破壊力があるものだったとは。

それ以来信長はとことんモテた。信長に群がる女子があまりにも多くて、あたしは信長のフォローをする回数が減ってきた。別に、あたしじゃなくてもあれだけ居れば誰かがフォローするでしょ。ああ、楽になった。でも、なんか。


「信長君、いいよねー。」

お弁当をつつきながら由香里がしゃべる。

「は?どこが?あんなボケボケしたヤツ。」
「えー。だってかっこいいしさ。お濃だって好きでしょう?」

由香里があんまり馬鹿なことを言うもんだから、あたしは飲んでいたお茶を噴き出した。

「何言ってんの!?そんなはずないじゃん!ただの幼馴染なんだし!」
「でも、最近お濃、信長君と絡んでないから、イライラしてない?」
「馬鹿じゃないの!」

別にそんなことない。別にイライラなんてしてない。

「まあ、あたしとかはただのファンだけどさ、お濃は本気なのかと思ってた。」
「もう!その話やめてよ!」

多分耳まで真っ赤になってたと思う。由香里の馬鹿。



この気持ちは気づきたくなかったのに。




あたし、多分、信長のこと、好きだ。


でもこの気持ちは絶対に言えない。あいつはあたしのことを姉みたいに思ってるだろうし、あたしにはその関係を崩す勇気なんてない。家に帰ってお風呂に入り、ひとりで泣く。この根性無し。


バレンタインデー、信長は引っ張りだこだった。紙袋に一杯になったチョコレートを見ては信長はため息をついていた。あいつは甘いもの嫌いだから。でも、きっと優しいからちゃんと全部自分で食べるんだろう。あたしは、せめて、と思ってチョコレートは用意しなかった。

放課後になり、校舎裏にゴミを捨てに行くと、信長が居た。一年生で一番かわいい女の子とふたりで。え。バレンタインデーにこのシチュエーションって。あたしは出て行くことも出来ずに、校舎の陰で固まっていた。


「信長先輩、チョコ、作ってきました。」
「あー・・・ありがと。」
「それと、伝えたいことがあります。」


わっ。やっぱり。

「わたし、信長先輩のことが、好きです。付き合って下さい。」


言った。


言った。あの子言った。すごい。見ると、チョコを差し出す手が震えてる。ああ、すごい勇気を振り絞ってあの子は。


「悪い。これ、受け取れないわ。」


冷たく言い放つ信長。


「君と付き合うことは、出来ないから。ごめん。」


女の子が逃げるように走り去る。何してんのあいつ。あの子は、あんなに勇気を振り絞って告白したのに、それをあんな冷たい断り方するなんて。


あたしはもう、我慢出来ずに飛び出して、信長の頬をひっぱたいた。


「え!?お濃?な、なに?」
「あんたねー!なにしてんのよ!」
「なにって、・・・見てた?」
「見てたわよ!あの子、泣いてたわよ。あんなに勇気を振り絞って告白してるのに、あんな断り方しなくていいじゃない!」
「・・・ごめん。」
「馬鹿じゃないの?あたしに謝ったって仕方ないじゃない。何言ってるの?」


言い出したら止まらなかった。あたしは全然関係ないのに。信長は頬をおさえて黙って聞いている。あたしは関係ないのに。


「大体あんたはね、ちょっと最近モテるからって調子に乗ってない?あんなかわいい子振って。あんたみたいなボケーっとしたヤツなんて、本当だったら誰も相手しないわよ!?何よ黙ってて。黙ってればいいと思ってんの?馬鹿じゃないのホント。言いたいことあったらはっきり言いなさ」「お前が好きだ。」




***



今日はここまで!今から戦じゃ!!



織田信長ブログ【みちしるべ】

  • 2006.06.21 Wednesday
  • 11:20
我が力の前には皆無力!殺し尽くしてくれるわ!

クハハハハ!第六天魔王、織田信長である!!合戦が始まりおったわ!クハハハハ!皆のもの!闘え!!斬って斬って斬りまくれい!!敵軍も浮き足だっておるわ!

しかし本陣は暇じゃ。こうなったら、ブログの更新をしてくれるわっ!!


***




高校から付き合っていた信長と別れたのは、やっぱり仕事が原因だった。

あたしは働き始めてからずっと、がむしゃらにやってきた。頑張って頑張って、今はそれなりの仕事を任されるようになってた。その日も遅くまで働いて、部屋に着いたのはもう日付が変わった頃だった。ひとつ、ため息を吐くと、ベッドで寝ていた信長が目を覚ました。


「あ、お濃。悪い、寝てたな。お帰り。」
「ううん。信長も仕事疲れてるでしょ?寝てていいよ。」

あたしがコートを脱いで、すぐに机に書類を出してその日の仕事の続きをはじめると、信長が話し掛けてきた。


「てゆうか、帰って来ても仕事?」
「うん。どうしてもやらなきゃいけないのがあって。」
「最近話す時間もないのな。」


信長の言うとおりだった。一緒に暮らしてはいるけど、お互い仕事で、あたしは下手すると土日もなくって。でも、仕方ないじゃない。仕事なんだから。


あたしが信長の言葉に聞こえないフリをしていると、信長はあきらめたように言った。

「あんまり、がんばりすぎるなよ。」


今思うとなんでこの言葉があたしのカンに障ったのかわからないけど、すごく嫌な気分になった。馬鹿にされてるみたいで。

何言ってるの?「がんばりすぎるな」?どうしてそんなことが言えるの?どうしてあたしががんばっちゃいけないの?あたしは書類に目を通したまま、衝動的に口を開いた。


「信長さー。」
「んー?」
「あたしたち、もう、やめよっか。」
「は?」


あたしは信長に向き直る。信長はびっくりした顔してた。

「だってさ、会う時間も少ないし、こんな関係、意味ないと思うの。」
「え、いや、なんで急に。」
「てゆうか、あたし、仕事を、ちゃんと、したいの。」

あたしがはっきり言い切ると、信長は少し考えてから、「荷物とかは、後で連絡する。今日は、出てくわ。」と言って、部屋を出た。




-


結局その部屋は信長の部屋だったから、あたしが出て行ったんだけど、それからあたしはより一層仕事に没頭した。休みなしに働いて、働いて。


仕事帰りの新宿駅、時計はもう23時。駅の構内は人が嵐みたいに流れていた。走って乗り換えホームに向かう中年のサラリーマン。これから新宿に繰り出すであろう派手な若い女の子。一生懸命帰る女の子を引き止める若い男。酔っ払ってまっすぐ歩いてないおじさん。

いろいろな人種がそれぞれの方向へ進んで行く。これをかき分けて中央線のホームに行かなくちゃと思い、ため息を吐いた所で、ふと、おかしな疑問が浮かんでくる。


あたし、どっちに向かって歩いたら良いんだっけ。

なんで、こんな頑張ってんだっけ。


って、なに考えてるんだろ。ダメだ。疲れてるからこんな事。早く家に帰ってシャワーを浴びて、明日の書類に目を通して、布団の中に入らなくちゃ。でもこの疑問は。


この疑問は、ずっと持っていたもので。


答えは、出てない。わからないから。だからずっと目を逸らしてた。少しだけ立ち止まる。人の流れは次から次へと押し寄せ、あたしはすぐに人の濁流に飲み込まれた。体が流され、周りの景色がどんどん白くなって行く。ああ、あたし、どこに行くんだっけ。






-


「・・・気がついた?」

目を開けると信長が居た。

「ここ、新宿駅の医務室。貧血だって。」
「なんで信長が・・・?」
「駅員が、お前の携帯の『自宅』にかけたから。」

ああ、そういえば。あたしの携帯の『自宅』のメモリは、まだ信長の部屋だった。

「あー・・・。ごめんね。」
「いや、いーよ。」




沈黙。すると信長があたしの頭を撫でながら、口を開く。やさしい声で。




「お疲れさま。がんばったね。」




あれ。




答えが、見つかった。




大きな手であたしの髪の毛をくしゃくしゃにする信長。そっか。あたし、この手が欲しかったんだ。どうして気付かなかったんだろう。

信長に褒めて欲しくて、認めて欲しくて。だからがんばってたのに。あたしは、それを、気付かずに、自分から。



「ごめんね。信長。ごめんね。」

あたしはもう、何を言ったらいいのかわからずに、額に手を当て、泣き、謝り続けた。信長はその間、ずっとあたしの頭を撫でててくれた。







医務室を出ると、新宿駅は終電を逃すまいと急ぐ人たちで、濁流はさらに強く、早くなっていた。

「あ・・・。」

つい、ひるんで声が出た。

「ほら。」


信長が手を差し出す。その手は、あったかくて、おっきくて。


この手をもう放すまいと、心に誓う。もう、どこに行くか迷うことなんてない。みちしるべがあるから。




あたしは、信長の手を、強く握る。










***




ええい!やはり本陣は退屈じゃ!わし自ら先陣に駆けつけ、殺して殺して殺しまくって、敵を食らい尽くしてくれるわっ!!!





織田信長ブログ【粉雪】

  • 2008.02.18 Monday
  • 16:37
わしを誰だと思っておる。魔王じゃぞ!!

クハハハハ!久しぶりじゃのう!信長じゃ!!なかなかわが軍は苦戦を強いられておるようじゃのう!!しかしそうでなくては面白くないわっ!!

出陣じゃ!ブログの更新をしてから出陣じゃーーー!!!



***


日曜日は、ものすごく早起きをして井の頭公園に行く。朝4時に起きて、ゆっくりと歩く。そこに行くと、彼女に会えるような気がして。



お濃と出会ったのは大学生の頃だった。ひとつ下の、恥ずかしそうに笑う女の子。たまたま同じゼミを取っていただけ。でも、うちのゼミのやつらはみんな飲み会が好きで、良く吉祥寺で飲んでた。(僕の部屋が吉祥寺にあるから)

やっぱりその日も「いせや」で酔っ払っていた。焼き鳥をくわえながらビールを飲んで、教授の物まねとか、将来の夢とか、恋人の作り方とかを話して、みんなで僕の部屋に移動し、酒を飲みながら眠りに就く。ものすごく自堕落だけど、それが楽しい。

時計が午前4時を指し、みんなの寝息を確認してから、僕はキッチンでタバコを吸う。どうせベッドもソファーも床も占領されてて寝る場所なんてないし。と、ドアが開いた。

「あれ?お濃、どした?」
「なんか眠れなくなっちゃいました。」
「そうなんだ。」
「うん。」

お濃は僕の隣に座って言った。

「ずっと、起きてるつもりですか?」
「まあね。どうせ寝れないし。」
「だったら、お散歩に行きませんか?」
「は?こんな遅くに?」
「もう、"早く"ですよ。」


ふたりで井の頭公園まで歩くことになったのはいいけど、外はまだ暗く、そして半端じゃなく寒かった。

「ちょっと、寒すぎじゃないか?」
「冬ですしねー。」
「つーか、手が冷たすぎて・・・」
「あたし、あったかいですよ。」

そういうとお濃は僕の手を握った。僕は、驚いてお濃の顔を見る。恥ずかしそうに笑うお濃。そうして手をつないで、いせやの横を通り過ぎて、公園に入る。

歩を進めるたびにサクっと霜が小気味良い音をたてる。ふたりで橋の真ん中に立って、空を見上げる。群青色の土台から、上に行くにしたがって水色に変わっていくグラデーション。無音。前を見ても、後ろを見ても、誰一人存在しない空間。

白い、塵のようなものが舞った。そして、つないだ手に落ち、消える。


「・・・静かだね。」
「・・・そうですね。」


そのままふたりで、落ちてくる粉雪を眺める。手のひらを広げ、そこに白いものが落ち、消えると、お濃が口を開いた。


「なんか、世界で、最後のふたりになったみたいですね。」


振り返った時のお濃は、きれいだった。

僕はお濃を抱き寄せる。近づく顔。冷たい唇。




それから2年間、僕とお濃は吉祥寺で生活を共にした。きっと、お濃は僕がいなくちゃ生きていけないんじゃないかと思うくらいに、ずっと一緒にいた。でも、そう思っていたのは僕だけで。


「それじゃあ、行って来ます。」


空港でお濃を見送る。世界地図を見て、右から行った方が近いのか、左から行った方が近いのかわからないくらい遠いところに、お濃は自分の夢を追いに旅立つ。僕は、賛成も反対も出来ずに、ただ、うつむいていた。

お濃が空港のゲートをくぐる。僕は小さく「さよなら」とつぶやく。そう、口を開いた瞬間、涙があふれる。僕は、お濃が振り返る前に、背を向けた。




それからもう、4年が経った。僕はまだ吉祥寺を離れられずに居る。あの時、もっとちゃんとした別れかたをしておくべきだったと、後悔してる。「がんばれ」さえも言ってあげられなかった。「ずっと愛してる」「待ってる」言えなかった言葉たちが、ずっと僕を責め続けていた。

井の頭公園はあの時と変わらずに、群青と水色の晴れた空と、冷たい空気と、無音。確かにそこにあったはずの、ふたりだけの世界を探しに来ても、自分がひとりきりということを確認するだけ。

橋の真ん中で、タバコに火をつけ、冷たい空気と一緒に吸い込む。空を見上げる。白いものが落ちてくる。あの時と同じ、粉雪。

不意に、後ろから懐かしい声が聞こ(省略されました。続きを表示するには武田信玄の首を持ってきてください。)




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織田信長ブログ【背伸びの予定】

  • 2008.04.23 Wednesday
  • 15:21
無双ORICHIは買うべきかのう?

クハハハハハハ!信長じゃ!!紅蓮の炎の味はどうじゃ!!

しかし本陣は退屈じゃ。敵軍も我と対峙するくらいならば、自ら死を選んだ方が苦しみは少なくて済むと思っているようじゃ。良くわかっておるのう・・・

仕方が無い。ブログの更新でもしようぞ。


***

恋人と会うときはいつも背伸びをした。

慣れないヒールを履いて、髪も巻いて、なるべくスカートやワンピースで出かけた。職場の人間に「今日デートでしょ?」決まってそう言われるのも、なんだか気持ち良かった。

2年前、やっとの思いで告白して付き合った恋人との日々は、クリスマスイブの今日、終わりを告げた。なにもクリスマスに振らなくてもいいじゃない。この日のために買ったワンピースでとびっきりのおしゃれをしたあたしは、涙を我慢してフラフラ街を歩いた。長い夜に灯り始めた街のネオンだけが、全てを包んでくれるように感じたから。

でもすぐに間違いに気付いた。今日クリスマスじゃない。周りを歩いてるのはカップルだけ。ああ、なにやってんだろあたし。手切れ金のつもりだか知らないけど、恋人がよこした淡い青色の紙袋が余計あたしをみじめな気持ちにさせる。別れの言葉を思い出させる。あ、だめ。泣いちゃいそう。

我慢出来ずに街灯の側にうずくまる。大丈夫。街はカップルや家路を急ぐ人だけ。誰もあたしになんか見向きもしない。そう。ひとりぼっちなのは、あたしだけ。

「どうしたの?」

声がした。顔だけ上げると、目の前に若い男が覗き込んでいた。慌てて涙をぬぐう。

「別に、どうもしてないわよ。」
「だって、泣いてるでしょう?」
「いろいろ事情があんのよ。」
「そうなんだ。」

見たところまだ二十歳そこそこ。かわいい顔立ちをしている男の子。うずくまってるあたしの目線に合わそうと、しゃがんで、心配そうに大きな目をくりくりさせている。

「なによ。道端で泣いてる女に構うなんて、ヒマなの?」
「うん。ヒマ。」
「クリスマスよ?」
「ああ、そうみたいだね。」

今やっと気付いたみたいに周りをキョロキョロ見るもんだから、それが少しおかしくて、あたしは笑った。

「実はあたしもヒマなの。飲みに行かない?」
「うん。いいよ。」

1ヶ月前から予約をしていたフレンチのディナーじゃなくて、その辺の居酒屋で、赤ワインじゃなくてビールで乾杯。

「っカー!うまい!あんた!聞く覚悟出来てるでしょうね!」
「信長。」
「なに?」
「信長っていうんだ。君は?」
「ああ、名前ね。あたしは濃姫。よろしく。」
「よろしく。それじゃ、話、きこっか?」
「その前に、注文ね。枝豆と軟骨揚げと刺身盛り合わせとあとこのぶり大根もそれとこの黒豚ソテーとあとは・・・」
「ちょっと、そんな食うの?」
「食うの!」

何杯飲んだかは覚えてないけど、それから二人でずっと話し続けた。というか、あたしが一方的に。信長は優しくうなずきながら聞いてくれた。あたしは勢い込んで飲んだせいで、21時過ぎには彼の肩に寄りかかっていた。

「だから、ね。あたしはね、東京来てから、ずっとひとりぼっちで。」
「うん。わかるよ。」
「それで、これでまた、ひとりぼっちになったの。」

信長は少し悩んでから、耳元で囁いた。

「うち、来る?」

こんな二十歳そこそこの若造に、連れ込まれるなんて。でも、まあ、もう、いっか。











「信長!まさかこんな綺麗なお姉ちゃん連れてくるなんて!やるじゃない!!」

彼は、実家暮らしだった。

ええー。いや、まさかこんな展開になるとは。一度適当に扱おうとしたあたしの体は、リビングの座布団の上に置かれ、信長のお母さんと小さい弟に囲まれていた。信長はにこにこしながらココアを入れてる。

まだ夜も遅くなかったので、家ではクリスマスパーティ真っ最中。「去年お父さんが死んじゃったから、ちょうど人数が少なくて寂しかったの。ゆっくりしていきなさいね。」信長のお母さんが信長に似た優しい笑顔で微笑む。じゃれてくる小さな弟。信長の入れてくれたあったかいココア。ああ、家族の団欒。あったかい。

気付いたらあたしの頬を涙がつたっていた。

「あ、あれ?ちょ、ちょっとごめんなさい。おかしいな。なんでだろ。」

慌てるあたしの頭を、信長のお母さんが優しくなでる。ああ、なんて、優しい笑顔。

「信長から聞いたわ。ずっと、ひとりで頑張って来たんだってね。偉いわね。良く頑張ったわね。」


ああ、なんでこんなに、あたしの、いちばんほしかった言葉を。


そうだった。あたし、ずっとひとりだった。彼氏が居ても、彼氏はあたしのことなんて見てなくて、あたしのワンピースとかしか見てなかった。あたしは信長のお母さんの手の中で泣き続けた。その間、信長は弟を連れて、別の部屋に行っていた。

信長が弟を寝かしつけてリビングに戻って来た頃には、あたしはもう落ち着いていて、お母さんと話してた。

「実はね、信長はね、前からあなたのこと知ってたのよ。」
「ええー?なんで?」
「デザインの仕事であなたの会社に出入りしてるの、知らなかった?」
「え?あ、ああーー!!!」

全然今まで気付かなかった。そういえば会社で、他の女子社員が騒いでる、かわいいウェブデザイナーの男の子と同じ顔してる。信長は恥ずかしそうに言う。

「本当に全然気付いてくれないんだもんな。ひどいよね。」
「あー、えっと、ごめん。えへへ。」

お母さんは嬉しそうにおしゃべりをする。

「それでね、信長ったらずっとあなたのこと気になっててね・・・」
「え・・・?」
「母さん!」

信長が顔を真っ赤にしてさえぎる。かわいい。
その日は朝方まで3人で飲んで、あたしはお母さんと一緒に寝た。

「うち、女の子がいなくて寂しかったのよ。家族が出来たと思って、いつでも来てね。お濃ちゃんみたいな娘が欲しかったの。あら、だからって深い意味はないのよ。」

寝る前に言ってくれたその一言が嬉しくって、あたしは「うん!」とニコニコしながら返事した。


その日から、あたしは信長の家に良く行くようになり、お母さんと一緒に料理を作ったり、小さな弟と遊んだりした。

信長との関係は、振られたばかりのあたしに気をつかっているのか、劇的な進展はなかった。でも、初詣に一緒に行った時、信長が恥ずかしそうに手を握ってきたところを見ると、少しずつだけど進展はしてるのかな。


あたし、思うんだ。

一生懸命背伸びして、自分を高く見せようとしてたら、本当の自分を、誰も見てくれなくなっちゃうって。そして、いつかバランスを崩して転んじゃうって。大事なのは等身大の自分を見てくれる人なんだ。

もうあたしは背伸びなんてしない。次にあたしが背伸びするとしたら・・・多分、日曜日の信長とのデートで、初キスするときくらいかな。



***


なにぃ!?我がブログを更新している間に、もう敵陣を落としたと申すか?クハハハハハハ!!それでこそ魔王信長軍の精鋭よ!では共に目指そうではないか!天を!!






織田信長ブログ【ヤンキー→乙女1】

  • 2008.07.15 Tuesday
  • 00:00
で、あるか?

クハハハハハハハ!久しぶりじゃのう!!信長じゃ!クックック。われが居らぬ間に天を掠め取ろうなどとは、くだらん輩じゃのう。

よし、部下どもよ・・・出陣じゃ!いったい誰が天を掌握すべきか、あやつらに見せてやろうぞ!!

その間、われはブログの更新をしようぞ。


***

「お濃ちゃん。いい子だからここで待っててね。」

ママがそう言ってモヤの中へ歩いていく。

あたしはそっちに行ったらママがもう帰ってこないのは知っている。なのに子供のあたしはお気に入りの人形で遊んでいる。ダメ。「行かないでママ」って叫んで。モヤの中に消えていくママ。ひとりになったことに気付かないで遊びつづけるあたし。早く、早く叫んで。行かないでって。そうじゃないと


ジリリリリリリリリリリリリリ


目覚し時計が暴力的に眠りから現実へと引き戻す。目覚ましを止め、「ねみー」とつぶやきベッドの上でタバコに火を点ける。


「・・・また、あの夢かぁ・・・」


窓の外からノイズが聞こえる。多分雨。あたまいたい。

バイトに行かなくちゃいけないから無理矢理起きて台所に行くと、そこにはパンとスープが用意されてた。蘭丸は大学に行ったらしい。遅めの朝食をほおばって、化粧をするのが面倒だったのでメガネをかけて、無い胸にブラをつけてバイトに出かけた。

この2DKの部屋で蘭丸と暮らし始めてもう1年が経った。

地元の高校が同じで、蘭丸は大学生、あたしはフリーターとして東京で二人暮しをしてる。蘭丸は頭が良くて優等生。あたしはよくいるヤンキーねえちゃん。男と女の二人暮しだけど、そういう関係じゃない。姉と弟みたいな関係。てゆうかそもそも蘭丸は女に興味がないし。


去年の3月、蘭丸は東京の大学に合格し、あたしは高校とヤンキーを卒業した。「どうせやる事ないから蘭丸と一緒に東京行こうかな。」軽い気持ちでだけど、そう言った時の蘭丸の嬉しそうな顔に引きづられて東京に来てしまった。


特にすることもないあたしが東京に居続けるのには理由があった。

信長の存在。

高校の友達で東京の専門に通ってる男の子。ボサッとした髪の毛に黒ぶちメガネ。たまにいたずらした時に顔をくちゃくちゃにして笑う奴。ずっと前から親友。


あたしは 信長が だいすきだ。


朝から晩まで信長のことを考えてる。どうしたらあたしは信長を失わずにすむか。信長を自分のものにしようだなんて考えてない。そんないちかばちかの賭けに出て負けたら、きっとあたしは消えちゃうから。ただ、あたしは信長のそばに居られればいい。



バイトが終わると雨はあがってた。携帯電話を眺める。

「よし。1週間経った。」

自分に気合を入れ、リダイアルの一番上にある信長に電話をかける。毎晩、信長がリダイアルの一番上に来るように一瞬かけてコールする前に切る。なんだか気持ち悪いけどそうしないと落ち着いて寝れない。そして毎晩、このまま電話しちゃおうかなと思ってる。

そんなことできるはずないのに。したら嫌われちゃうかもしれないのに。しつこい女と思われないためにあたしは、最低1週間は信長には電話しないようにしている。



3コール目で信長が出た。

「もしもし、あたしー。おーう。ひっさしぶりー。」

電話の向こうから信長の声が聞こえる。やさしい声。

「あんた今日ひまっしょ?どーせ。あはは。」

水曜日に信長がバイト休みなことくらい覚えてる。

「あたしもヒマだからさ、飲み行こうよ。下北に良いお店見つけたから、そこに行こうよ。」

慌てて早口にならないように。それがばれないように必死。

「んじゃ、19時に下北のマック前っつーことで。」



電話を切ってため息をつく。

ひとこと話すたびに「だいすき」って言い間違えてしまいそうで怖い。

自分の頭の悪さが嫌になる。



一度部屋に戻ってシャワーを浴びて化粧をして、自転車で下北沢へ出かけた。19時を5分くらい回ったところで信長が来た。「よっ」「おせえよ」黒いジャケットにジーパン。ぼさぼさの髪に黒ぶちめがね。かっこいい。心構えしてなかったら抱きついちゃいそうだった。

入ったお店は良い雰囲気で、おいしいお酒と料理。二人で「うーまーいーぞー!」って叫んで、バカみたいに笑う。楽しい。最後の方に出てきたシメサバをバーナーであぶった料理の酢の匂いがちょっときつかった。


店を出て、信長が笑いながらあたしに話し掛ける。

「あの酸っぱい匂い、おめーの脇から出てたんじゃねーの?」

「ちげーよ。信長が臭かったんだよ。」

うるせ!って言いながらあたしの頭をチョップする。やめてよ。ダメージでかすぎるんだから。


2軒目は近くに座ってた客がうるさかったけど、それはあたしには嬉しかった。声が届くようにと、信長との距離が縮まるから。信長の長いまつげに見とれながら、あたしはくだらない話をしつづけた。



「じゃーなー。」

「おー。じゃーねー。」



もうひと気も少なくなった下北沢で別れる。

あたしは自転車、信長はタクシー。

この帰り道で、あたしはいつも泣きながら自転車をこぐのだ。



ああ、どうしよう。あたしは信長がだいすきだ。



部屋に帰ってひとりで枕をかかえる。

ねえ信長。アンタ、彼女いんの?

ねえ信長。あたし、アンタが好きなんだ。

ねえ信長。アンタ、あたしを置いていったりしない?



この呪文を唱えたらきっと劇的に何かが変わる。

でも、きっと唱えた瞬間にゲームオーバーだ。

あたしにはそんな勇気、ない。



リダイアルの一番上に信長がいることを確認して布団に入る。

どうせまたあの夢を見るんだ。

夢の神様の馬鹿。信長を出せ。





***

なに?もう敵を殲滅したと?・・・クックック。魔王の部下は、やはり魔物か。これから面白くなって行くというのに、貴様らの勇猛果敢のおかげでブログの更新も出来ぬわっ!しかしよかろう!!魔物ども!わしについて来い!天をつかもうではないか!!



織田信長ブログ【ヤンキー→乙女2】

  • 2008.07.21 Monday
  • 00:00
長いぞ!続きじゃ!


なんと!先日の敵がまだ粘っておるとな?・・・クックック。面白い。あくまでこの魔王にたてつくか。よかろう。生きておることを後悔させてやろうぞ!!

ならばわれは先日のブログの続きでも書くとしようか。おっと、まだ先日のブログを見てないものは、そちらから読むことをお勧めするぞ。



***

「キャー!」

惰眠をむさぼってると、大体何か暴力的な音声に起こされる。11時半。せめていいともまで寝かせてよ。台所ではバタンバタンと暴れてるっぽい音がしてる。パンツとスポブラだけの格好で、頭をかきながらドアを開ける。

「なに。どしたの蘭丸。」

「お濃ちゃん!ごめんね起しちゃった!?で、でもね今ゴキブリがね!ああっ!そこに!!」

蘭丸の指差した方を見ると、1センチもない小さなゴキブリが「え?俺?」みたいな感じで居た。「うん。お前だよ。」スリッパを持ってスパン!と潰す。ティッシュにくるんでゴミ箱へ入れると蘭丸が抱きついてきた。

「ごめんねお濃ちゃん!僕ね、お昼ごはんを作ろうとしてたんだよ?そしたらね、急にゴキブリが出ちゃって、でも起こすつもりはなくってね、だから・・・」

「はいはい。わかったわかった。」

蘭丸の頭をなでると上目遣いで「・・・ごめんね」って言う。こいつは。計算でやってるんじゃなかろうか。まあ、かわいいんだけどね。イラつく。ぶっ飛ばしてそれでも男かって言ってやりたくなる。あーマジイラつく。なにこれ。あ、あたし生理だ。

やつあたりをしたとしてもこの子はウサギみたいに震えてそれを受け入れるだろうから、やめた。蘭丸に生理はないし。お昼ごはんはしっかりあたしの分まで用意されていたし。うん。かわいい弟。食後に鎮痛剤を飲んでいると蘭丸がバタバタと玄関へ向かう。


「今日、水曜日だからお濃ちゃん飲んで来るんでしょ?」

「あー、うん。多分ね。」

「りょーかい。じゃあ、夕飯はお互い適当にって感じでー。大学行ってきまーす。」


そっか。今日水曜日だった。

相変わらずあたしは信長に絶賛片思い中。もう3年近くになる。毎週水曜日に飲むだけで、特に進展はなし。

まあ、でも、いいんだ。今のままでも十分楽しいし、まああたしも信長も忙しいし。・・・もう会えなくなるの、怖いし。


いつも通り下北で待ち合わせして、安い居酒屋で飲む。この毎週水曜日の飲みを始めてから、もう何回目になるか数えきれないくらいだけど、いつまで経っても慣れない。緊張を押し殺すのに必死。「すきなの」って言うのを我慢するのに必死。

そんなだからいつも通り飲みすぎて、立ち上がった時に気付いた。あ、あたし今日、鎮痛剤飲んでたんだった。そのまま座り込んで立てなくなった。

「お前バカだなー。今日そんな飲んだ?」

「うるさい。たまにはあるでしょこーゆーこと。」

「あーもー、しょーがねーな。とりあえずうち来るか。」



え?

なにそれ。いいの?行ってもいいの?信長んちに入れてくれるの?ヤバい。どうしよう。なにも心の準備出来てないよ。タクシーに揺られてる間、酔いのせいじゃなくて頭に血がドクンドクンと流れていくのを感じてた。

信長の部屋は小奇麗で、信長のにおいがした。当たり前だけど、信長のものがたくさんあった。先月買った新しいメガネ、ピッタリめの黒いジャケット。

「へー。意外ときれいにしてるんだねー。」

「おー。てかお前もう平気なの?」

「うー。とりあえず水飲ませて。」

「洗面所あっち。」


もう酔いなんてふっとんじゃったけど、とりあえず落ち着くために水を飲む。落ち着けあたし。そこで、嫌なものを見ちゃった。ふたつ並んだ歯ブラシ。青いのには「信長」っておっきな字が書いてある。もう一つは、ピンクの歯ブラシ。


あーあ。来なきゃよかった。なにしてんだろあたし。ヤバい。どうしよう。泣きそう。我慢しなきゃ。部屋に戻って、信長にもう大丈夫って言って、外に出てタクシー捕まえて、そこで思いっきり泣けばいいんだ。行こう。早く。その時玄関から音がした。

「おじゃましまーす。」

え?誰?彼女?マズい。はち合わせ?いや、何もやましいことなんてしてないんだけどさ。てゆうかあたしが気を遣う所じゃない?でもあたしは信長にとってはただの友達?だったら、大丈夫、かな?いや、無理。彼女の顔なんて見たら泣いちゃう。

そんなあたしの気持ちをよそに信長は「おー、来た来た。大変なんだよー。」と気楽な声を上げてる。バカ。死ね。


「お濃ちゃん!?」


来たのは蘭丸だった。泣きそうな目ですがりついてくる。

「大丈夫?大丈夫お濃ちゃん?何か欲しいものある?」

「あー、うん。大丈夫大丈夫。てかあんたなんでここにいんの?」

「うん。呼ばれたからー」

部屋から信長の声。「おー、呼んどいた。」呼んどいたじゃないわよ。どんだけ焦ったと思ってんのよ。

「てゆか蘭丸、なんで信長んち知ってるの?」

「え、高校から普通に仲いいもん。」

あー、ま、そりゃそうだ。部屋に戻ると信長はゲームの用意をしてた。「桃鉄やろーぜ!」ピンクの歯ブラシが頭を離れない。・・・全然そんな気分じゃないよ。でも、うん。今日で最後か。最後までしっかり友達をやろう。そしてこの気持ちを殺そう。蘭丸と一緒に家に帰って、今回は蘭丸の胸で泣かせてもらおう。

言いだしっぺの信長が5回キングボンビーに当たって、午前4時。信長がギブアップした。「あー!もーいい!つか電車動くまでちょっと寝るか。」

「あ、そしたら僕、歯みがくー。」

パタパタパタと洗面所に行った蘭丸が、戻って来て手に握ってたのは、ピンクの歯ブラシで。

「つかあたしだけ歯ブラシねーじゃん!」

コンビニに行くと言って部屋を飛び出した。「あ、お濃ちゃん、僕も一緒に行くよ!」っていう蘭丸の声が後ろで聞こえたけど、無視した。バカ。蘭丸。こんな顔見せれるはずないじゃん。

エレベータに乗ったとたん、嬉しくて、嬉しくて、ボロボロ涙がこぼれてきた。

勘違いだった。彼女とかじゃなかった。いいんだよね?まだ片思いしてて、いいんだよね?口に手をあてて、声が出ないように泣く。ああ、良かった。本当に良かった。エレベータの中でつぶやく。

「・・ありがと。蘭丸。」

明日のお昼は久し振りにあたしが作るよ。



***

ん?なんだと?まだ粘ると?ほほう・・・面白い。それでは、死よりも苦しい織田軍の猛攻を見せつけてやろうぞ!!ものども、これから総攻撃をかける!敵どもを木端微塵にしようぞ!!!

わしはもうちょっとブログの更新をしてから行く!


織田信長ブログ【ヤンキー→乙女3】

  • 2008.07.25 Friday
  • 00:00
ええい!今回も続きじゃ!もう飽きてきたぞ!

ほほう。あくまでこの第六天魔王である信長に逆らうか・・・。面白い。ますます面白くなってきおったぞ!それではこの信長自らが戦場を駆ける鬼となろうぞ!

その前に前々回前回のブログの続きを書こうではないか!


***


子供の頃から顔が女の子みたいって言われてた。おもちゃやマスコットみたいに扱われるのには慣れてたけど、高校の時にいじめを受けたことがあった。鏡を見ても自分の男らしさみたいな部分は見つからなくて、自分の性別について疑問を持ってた時期だった。

自分のアイデンティティに疑問を持つような弱い心を持っていると、いじめっ子はそういうのに敏感だから。僕はいつも下を向いて、誰とも関わらないようにしてた。そんな時にお濃ちゃんからこう言われた。

「てゆかさ、男とか女とか、性別って形だけのものでしょ?そんなことより大事なのは、自分らしさなんじゃないの?蘭丸が、蘭丸らしくいるのが大事だろ?あ?コラ!」(高校の頃はお濃ちゃんはバリバリのヤンキーだった)(本人にこの頃の話をすると顔を真っ赤にするのが可愛い)

その頃からずっと、僕とお濃ちゃんは親友。というか、ほとんど姉弟かな。今朝も二人で暮らしている部屋のキッチンにゴキブリが出て、お濃ちゃんに退治してもらったし。根性ナシの弟でごめんなさい。


「今日、水曜日だからお濃ちゃん飲んで来るんでしょ?」

「あー、うん。多分ね。」

「りょーかい。じゃあ、夕飯はお互い適当にって感じでー。大学行ってきまーす。」


毎週水曜日はお濃ちゃんはどこかで飲んで来る日だ。相手は知らない。ただ、好きな人と飲んでるってことだけは聞いた。高校の頃からお濃ちゃんにはほとんど浮いた話はない(ヤンキーだったから)けど、幸せになってほしいと思う。僕の大事な人だから。


大学に行って、部屋に戻って、掃除して、晩御飯を作って食べて、ああ、僕って主婦に向いてるかもーなんて思ってたら信長君からメールが来た。

『今日うち来ない?ちょっと酔っ払いの友達いるけど。あと来るならマイルドセブンのライト買ってきて。』


いつも突然なんだもんなー。なんて愚痴りながらもコンビニでタバコを買って、タクシーに乗って信長君のうちへ行く。鍵を開けて部屋に入る。「おじゃましまーす。」

奥の部屋で信長君が手招きをしてるけど、洗面所に人の気配がする。嫌だな。酔っ払いの相手するの。そう思って覗き込むと、そこにはお濃ちゃんがいた。

「お濃ちゃん!?」

なんで?なんでここにお濃ちゃんがいるの?だって今日は水曜日じゃないか。水曜日はお濃ちゃん、好きな人と飲む日でしょ?好きな人って?まさか。てゆうか顔真っ青だよ?お濃ちゃん、大丈夫?


「大丈夫?大丈夫お濃ちゃん?何か欲しいものある?」

「あー、うん。大丈夫大丈夫。てかあんたなんでここにいんの?」

「うん。呼ばれたからー」

「てゆか蘭丸、なんで信長んち知ってるの?」

「え、高校から普通に仲いいもん。」


僕は手に持っていた合鍵を後ろに隠した。


それから3人で桃鉄をして朝まで遊んだ。お濃ちゃんが好きな人って信長君なの?信長君はお濃ちゃんのこと、どう思ってるの?そんな疑問を押し隠すように、必要以上にはしゃいで、焼酎を飲んだ。

信長君が2箱目のタバコを空にしてから、「あー!もーいい!つか電車動くまでちょっと寝るか。」って言ったから、口の中の焼酎の匂いが気持ち悪くて歯を磨いた。時に気付いた。お濃ちゃんが僕の歯ブラシを見て、少し泣きそうな顔をした。

ああ、バカ。なんで信長君の部屋にある歯ブラシを僕が普通に使ってるんだ。それを見てお濃ちゃんがどう思うかなんて、少し考えればわかるのに。傷つけた。何してるんだ僕は。大事な人を、傷つけた。

「ちょっとコンビニ行ってくるね!」

「あ、お濃ちゃん、僕も一緒に行くよ!」

お濃ちゃんは振り返らないで部屋を出て行った。玄関で立ち尽くしていると、後ろから信長君が来た。

「いいよ。蘭丸は部屋に居ろよ。」

僕の頬に、信長君の手が触れた。






口の中にマイルドセブンの香りが広がった。






***


待たせたな!それではブログの更新はこの辺にして、いざ出陣と行こうか!奴らに地獄よりも恐ろしいこの信長の責めを見せてやろうぞ!!



織田信長ブログ【ヤンキー→乙女4】

  • 2009.11.25 Wednesday
  • 01:37
久しぶりじゃのう!一度飽きたがまた書くぞ!長いぞ!

ぬ…。おい貴様。敵を一撃で撃破出来なかっただと…?

ふざけるなっ!一撃必殺こそ我が軍の掟!ダラダラと戦闘を長引かせることなど言語道断。潔く自害せぬかっ!出来ぬのならわしが自ら貴様の首をはねてくれよう!!

前に書いたブログの続きを書いてからなっ!

第1話
第2話
第3話



***

三年ぶりくらいかな。この人と会うのは。いくつになっても変わらない、若々しい見た目。きっとまた新しい恋をしてるのだろう。「久しぶりね、お濃ちゃん。元気だった?」タバコの煙を横に向けて吐き出しながら言う。別にそうしなくたって。あたしだって普段タバコ吸ってるよ、ママ。

ママは五年くらい前からたまに電話してくる。大体男と別れた時。はじめは嬉しくて何回か会ったけど、すぐやめた。だってこの人はただ寂しいだけだから。あたしにはそんなのに付き合ってる暇ないし。でもまた会っちゃった。なんでだろ。ああ、うん。あたしが、寂しかったからか。



蘭丸との2人暮らしは、唐突に終わりを告げた。信長の部屋に上がったあの日から3日後、蘭丸の部屋が空っぽになってた。残ってたのはダイニングのテーブルの上に、ぽつんと置いてあった手紙。蘭丸と信長の関係と、ごめんなさいって百回くらい書いてある手紙。

何も言わずに出て行ってごめんなさい。
知らなかったんだ。ごめんなさい。
もうここに居られない。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

そんなことばかり書いてあった。そして最後に四文字。

さよなら

それを見て、スーッと、頭が冷たくなってくのを感じた。足の感覚がなくなって、そのまんまへたり込んだ。心臓が背中側に持っていかれて、息が出来なかった。苦しくて、苦しくて、苦しくて。ぷは、と言ってやっと呼吸が出来たら、今度は、ぷは、と一緒に涙が止まらなくなった。ぶは、ぷは、ぷは、と、泣く。座っている力もなくなって、横に倒れてまた、ぷは、ぷは、ぷは。

何に対して泣いてるかなんてわかんなかった。ただ、苦しくないように一生懸命に呼吸をして、その度に涙が噴き出してた。ダイニングの床がすっかりあたしの体温を奪った頃、少し落ち着いて、冷たい体を引きずって、水を飲む。振り返って空っぽになった蘭丸の部屋を見て、泣いてる理由がわかった。

あたしも、全部なくなって、空っぽになったんだ。

そうだよね。信長追いかけて、蘭丸と楽しく過ごす為に東京に来て。そんだけだもん。あたしの全部。今度は蘭丸の部屋で子供みたいに大声上げて、泣いた。



それからぬけがらみたいに過ごして、目の腫れがひいた頃、ママから「会いたい
」の電話があって、言われるがままに外に出た。

「ちょっと、元気じゃないかな。」

ホントはちょっとどころじゃないけど。あの時と同じ。あんたに捨てられた時とおんなじ感じ。大事な人がいなくなっちゃったの。

「ねえ、ママ。」

ずっと言わないでいた質問が口から出た。

「なんであたしを捨てたの?」

ママは少し目を大きくした。驚いた?ごめんね。こんな事聞かれたら困るよね。少し天井を見て、タバコの火を消して、それからゆっくりしゃべりだした。

「捨てたっていうか・・・逃げたのよ。・・・ずっと、お父さんには愛人がいてね。でも、私はお父さんをずっと好きでね。我慢してれば、いつか幸せな家庭になるかもって思ってた。」

ママはこめかみの辺りに手をあてて続ける。

「で、我慢して我慢して我慢して、はじけちゃった。若い男と逃げちゃったの。それからすぐにお父さんが亡くなったって聞いたわ。あんたのことを引き取ろうとしたけど、若い男と逃げた嫁になんて渡せないって、親戚連中がね。」

ため息をつき、首を横に振る。

「バカだったわ。あんたとあの人、大事なものを守る為に何もしようとしなかった。我慢なんて、何もしてないと同じ。言わなかったこと…後悔してる。」

なんか、スッと体が軽くなった。

父親の行動に対する驚きや、ママがあたしのことを嫌いで捨てたわけじゃないっていう安堵とか、そういうのよりもっと。やることが見えたっていう、気付き。

そっか。あたしまだなんもしてないや。信長にも気持ち伝えてないし、蘭丸に行かないでとも言ってない。いいのかあたしこんなんで。らしくないんじゃないの?らしくねーだろ。気合い足んねーだろコラ。

ヤンキーに戻りつつあるあたしの横でママは話を続けてた。

「あんたさえ良ければ、もう一度一緒に…」
「ありがと!ママと話して元気出たよ。あたしやることあんだわ!行くね!」
「ちょ!なによその豹変!」
「あたしはもう大丈夫だよ。無理しないで。ママにはママの生活があるんだから。」
「つってもあんた・・・」
「ママ、今度の彼氏はいくつ?」
「・・・あんたの方が歳は近いよ。」

幸せそうな苦笑いするママ。いーよ。お互い大事なもんあるんだし。今度楽しく女同士の話でもしようね。

あたしは勢いよく店を出た。まずは信長んちだ。


***

何?次こそは一撃で決めると?羅刹となると申すか。クハハハハッ!面白い!ではもう一度チャンスをやろう!次の一撃で決めてみせよ!必ずだ!次で終わりにせよ!もう良いだろう!終われ!


織田信長ブログ【ヤンキー→乙女5】

  • 2010.04.02 Friday
  • 00:00
もうこの話は終わりにしたいのじゃ!設定とか考えるのすげー大変なのじゃ!


ワレハ、魔王ナリ。
ワレニ、長編ハ、向カズ。

ワレハ、魔王、ナリ。






***

駅の通りを少し行くと、もう高い建物はなくなっていつもシャッターが閉まってる古本屋とか神社しかない。そこを抜けると、ところどころに田んぼと、ぎっしりと密集して民家がある。そんだけ。なんもない町。

「…変わってないね」
雨上がりで濡れた路面に映るぼんやりとした灯りを眺めながらあたしは言った。

「そうだな」
信長も下を見て言った。



あれからあたしたちは蘭丸の行方を2人で探してる。お互いの蘭丸との関係や気持ちの話はしなかった。そんな話したらその場で動けなくなりそうだったから。

大学に行っても、他の友達を訪ねても、どこにも蘭丸のにおいは残ってなかった。誰に聞いても「突然連絡がつかなくなった」ってだけ。

ひょっとしたら、と思って2時間電車に揺られて地元に戻って来たけど、やっぱここにも蘭丸のにおいはなかった。捜すあてがなくなったあたしたちは、なんとなく学校に向かって歩いた。

やっぱ地元だから、そこここに懐かしい景色が広がる。自転車通学は禁止されてたから、あっちに見える秘密の駐輪場で良く蘭丸と話したな。あのパン屋まで3限の休み時間に走って行って、蘭丸だけ4限間に合わなかったな。

・・・嫌だな。こんな時に。蘭丸との思い出ばっかり。信長を見ると、どこか遠くを眩しそうに見てた。そっか。信長も、思い出見てるんだ。蘭丸が居た、高校時代を。

濡れた草のにおいが強くなって、校門に着いた。やっぱり門は閉まっていて、いつも遅刻の時に使ってた、野球部の穴の開いたフェンスからグラウンドに入る。また、思い出の蘭丸を探して校舎を見上げる。三人で来れたら暖かい学び舎に見えたんだろうけど、今はただの、無機質な四角いコンクリートだった。

「・・・いた。」

信長が、喉から声を絞り出した。信長の視線の先は、屋上。手すりの、外。



あいつ、何やってんの。バカ。バカ。バカ。階段を駆け上がる。どうしよう。あたし、蘭丸、なんでこんなこと。

「蘭丸!」

一足先に屋上に着いた信長の声にビクッとして振り返った蘭丸と目が合った。あ、あれは、あの頃の目。女みたいっていじめられて、自分のよりどころを探してる目。
そんな目、しないでよ。息が詰まるじゃん。

「なんであんたそんなとこいるのよ!」
精一杯、吐き出した。

「…なんか気付いたら、こんなとこにいたんだ。」
手すりにかかった自分の手に視線を落として、蘭丸は続けた。

「僕はお濃ちゃんの大切な気持ち、めちゃくちゃにしちゃったから。…謝って許されることじゃないけど…ごめんね」

気持ちが爆発した。

「あんただって、あたしの大切なもんだ!だから…そんなことするなぁ!バカぁ!」
驚いた顔の蘭丸。その隙に信長が蘭丸に飛びついて手すりの内側に引きずりこんだ。

「お前!こんなっ…こんなに痩せちまって!なんでこんな…!」

「らんっ…よかっ…しんぱ…」

もうあたしも信長も涙が止まんなくて、何言ってるんだかわかんなかった。ただただ、蘭丸に抱きついて泣いてわめいた。





それから、あたしたちは三人で暮らしてる。みんながみんなのことがおんなじだけ大切ってわかったから。「好きじゃない女と毎週飲むはずないだろ」って、顔を真っ赤にして信長が言ってくれたのは嬉しかったな。

そんで、ヤンキーねえちゃんだったあたしは、恋する乙女を経て現在、南の島にやってきた。あっちい。遠くで波の音が聞こえる。少しおかしな形かもしれないけど、これから先ずっと三人で病める時もすこやかなる時も、ね。そう誓ってステンドグラスを見上げると、後ろから呼びかけられた。

「おい、写真とろーぜ」
「お濃ちゃん、はやくはやく!」

白いタキシードを着た蘭丸と信長が教会の扉の前で微笑んでる。

「あんたたち、これ動き辛いんだからエスコートくらいしろよ!」

あたしはウエディングドレスを引きずって二人にかけよった。



***

ガッ!ハッ!クッ…!
ハァ、ハァ、ハァ…

今回は、危なかったぞ。我の中にある真の闇の力を解放せねば、この戦を乗り切れなかったやもしれん。長編になると必ず出てくる伏線?設定?そんなものに何の意味があるというのだ!今を生きろ!「今を生きる」だ!な!



織田信長ブログ【ひまわり1】

  • 2010.09.04 Saturday
  • 00:00
また新しい信長じゃ!しばらく続くぞ!我慢せい!

クハハハハ!信長である!なにぃ?まだ敵の城を落とせないと申すか!なにをタラタラやっておるか!!うん?攻め方がわからない?貴様、何を言うておる。

単純に一方向からの攻めで落ちるような城ばかりだと思ったら大間違いであるぞ!多角的な視点から判断して攻撃を加えぬか!

わからないのなら我がブログを見て勉強せい!!

***

グラデーションも何もなく、ただ青い絵の具を均一に塗ったような、雲ひとつ無い夏空。教室の中で揺れるカーテン。一番窓際の席で授業を受けている、髪をひとつに束ねた斉藤の少し汗ばんだ首の後ろを、僕は一番廊下側の席からぼーっと見つめていた。

隣の女子に話しかけられて笑う斉藤の笑顔は、青空によく似合う。明るくて、見てる人を元気にする、太陽みたいだ。

斉藤は女子バスケ部のエースで、明るくてかわいい。人懐っこい笑顔で誰とでも仲良くなれる、クラスの人気者だ。まあ、美術部の僕とはグループが違うので、今までほとんど話したことはないんだけど。

それでも僕は斉藤に惹かれていた。ただ明るいとか、かわいいってだけじゃない。なんていうか、自分が周りを明るくしようっていう感じ。友達が泣いてたら一緒に泣いて、その後で一緒に笑ってる。なんかその一生懸命な感じがいいなって。

「織田は好きな子とかいるの?」

そんなことを考えてたもんだから、昼休みにクラスメイトの秀吉にそんな質問をされた時に、少しだけ焦った。

「なんだよ急に」
「いや、あんまり織田からそういう話聞かないからさー」
「びっくりするじゃんか」

購買で買ったパンを一口食べて慌ててないフリをする。

「で、いるの?好きな女子」
「いるよ」
「誰?誰?」


斉藤。


なんて事は言えるはずもなく、「そんなの言わないよ」とごまかした。秀吉は午後の授業が始まるまでずっと「誰?誰?俺協力しちゃうよ?マジで」とうるさかったけど、無視した。

放課後、美術室に寄って文化祭で展示する絵の締切りを聞いてからバイトに向かった。個人経営の小さなカラオケ屋で、カウンターで受付するだけの楽なバイトだ。文化祭の絵を何にしようかなーと考えていたら、高校生のカップルが来た。

「2名で」ふんわりとした雰囲気の優しそうな男がにっこりと笑って言った。感じの良い男だな。どこの制服だろう。うちの学校じゃないな。後ろに居る女の子はどうやらうちの高校みたいだけど。

ふと女の子を見て、声が出そうになった。斉藤だった。どうやら僕には気付いてないらしく、壁の張り紙とかを見ている。まあ、ほとんど話したことないしね。「8番の部屋になります」僕は下を向いたまま彼氏にリモコンを渡した。

狭い廊下を曲がって部屋に入っていく二人。そっか。斉藤、彼氏いたんだ。まあ、あんだけいい子だし、かわいいしね。普通彼氏くらいいるよ。別に僕が何か行動に移したわけじゃないから、振られたわけでもないし。大体彼氏すげーかっこよかったし。感じもいいし。でも。でも、あー、やばい。少し泣きそうだ。

カウンターで頭を抱えていると、ドタドタドタ!と廊下を走る音が聞こえた。カウンターの前まで走って来て、止まった。斉藤だった。

「あ・・・よ、よう」

我ながら間抜けな声であいさつした。斉藤は少し、口をパクパクさせてから、息を吸って、大きな声で言った。

「とっ、友達だから!!」

頭の中が一瞬ハテナになった。友達?あの男と?それをなんで僕に?ああ、そっか。他校の男と付き合ってるとか、嫌らしい事をしていたとか、尾ひれ付けた噂を流されたくないってことかな。そんなことしないから大丈夫だよ。僕は出来る限りの笑顔を作って言った。

「あ、うん。そうなんだ。わかったよ」

斉藤は、ほっとした顔で少し笑い、部屋に戻っていった。

斉藤と会話が出来た事は嬉しい。でも僕じゃあの男に勝てる要素ないしな。でも友達だって言ってたし。でもそれが本当かなんてわかんないし。頭の中がぐるぐるになってきた。もう一度斉藤と会うのも嫌だったので、店長に頼んでバイトを上がらせてもらった。

もう日も落ちて、空の色は深い群青に変わっていた。川沿いの道に咲いているひまわりは、太陽の位置がわからず迷っているようだった。でも明日になれば、きっとこいつはすぐ太陽の方を見るんだろうな。僕とおんなじだ。

***

・・・わからぬか?まだわからぬと申すか?

ええい!では来週またここに来い!多角的な視点というものを思い知らせてやるわ!!




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