新島八重ブログ【着物と人力車】

  • 2015.12.29 Tuesday
  • 00:00


同志社のイベントに出るために襄と一緒に出かける事になった。さすがにいつもみたいなおかしな格好で行ったら襄の評判を落とす事になるかもしれないと思ってタンスを開くとふと、男装用の装束が目に入った。

これを見て思い出すのは会津戦争の時のことだ。昔から砲術に親しんでいたあたしは女だてらにスペンサー銃を持って前線に出て行った。その姿を見た女子たちが「キャー!かっこいいー!」だなんて言うもんだからあたしも調子に乗って、じゃあ結婚しようか、なんて冗談を言った。

そうしたら真顔で「それはないです」と返されたので、しまった、柄にもなくくだらないことを言って滑ったと思っていたら「あたし、最低年収1千万ないと結婚しませんから」と言われた。

それから結婚相手に求める条件の話になったけど専業主婦で家事は共同という言葉が出た時点でつい笑ってしまった。会津戦争で一番の思い出はこれだな。

男装してスペンサー銃を持っていこうか悩んだけど、兄の結婚式で一度だけ着た、ちゃんとした着物に袖を通した。

着物は嫌いだ。

重いし、動きにくい。それにこのきらびやかな柄を見ていると、なんだか自分自身が飾り物になったような気分になる。夫の3歩後ろを歩く、単なる飾り物に。

家を出てからすぐに襄が人力車を見て子供みたいに「あれ乗ってみたい!」なんて言うから、お前がそれに乗ったらあたしはどうすんだよ殴るぞと言ったら「え!一緒に乗ればいいじゃないですか!」などと言う。

このご時世で男子が女などと一緒に人力車に乗るなんて周りの目が許すはずないだろ馬鹿かと言ったら「僕は気にしませんよ!」と犬コロみたいな目であたしと人力車を交互に見る。

仕方なく一緒に乗り込んだがやはり周りの目は厳しい。これは襄もいたたまれない気持ちになるだろうと隣を見たら「あ!川だ!」なんていつも見てる川を見ただけではしゃいでるからこいつは本当に馬鹿だなと思った。

途中で人力車を引いてる人が「奥様、素敵なお着物ですね」なんて言うからあたしはこの着物ってのが死ぬほど嫌いなんだよと思いながら「ありがとう」と言った。

襄がそんなあたしを見て「僕は普段の格好のが好きですけどね。周りなんて気にしなくて良かったのに」なんて、見透かしたような事を言うのでなんて言おうか迷っていたら「八重さん!猫です!」と襄が言ったので「追いかけろ!」と人力に言って二人で笑った。


 

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